「素」が気になる

最近気になる言葉があります。

「素」 す

です。

す【素】[名]
装わないで生地(きじ)のままであること。また、他のものが加わらないでそのものだけであること。「化粧せず素のままで店に出る」

転載|デジタル大辞泉の解説より

そう、デジタル大辞林の説明にあるように、素うどんの「素」です。
ではこの言葉の何が気になるのかというと、

なぜ、素蕎麦と言わないのか?

ということです。おそらく、なにも入っていない蕎麦を呼ぶ時は単純に「蕎麦」というのではないかと思います。

主題とは離れますが、麺界の中で一番「素」が似合う男といえば、当然おわかりだと思いますが、「素麺」(そーめん、そうめん?)です。すの麺、麺しかないと言うことなんですね。素晴らしい純朴さです。
しかし、「すめん」ではなくて「そーめん」と呼ばすところがちょっと違和感がありますが、これは次回以降で取り上げたいと思います。

さて、この「素」に対してのうどんと蕎麦の生い立ちの違いに付いて考えたいと思います。なぜ、うどんには「素」をつけるのに、蕎麦にはつけないのか。。。
まずは仮説を立てて検証していく、今回は仮説思考で進めてみたいと思います。

その昔、うどんと蕎麦は麺界の中でも、1,2を争う両雄であり、主役の座を奪取しようとするガチのライバルでした。
白と黒、太と細、つるつるとずずずっ、もちもちと喉ごし、小麦粉100%と蕎麦とつなぎの混合(10割もあるが)、うどん屋と蕎麦屋、ひらがなと漢字

このような状況ですから、日本全国で恐ろしほどのうどんと蕎麦の戦いが繰り広げられ、毎日毎日戦いに明け暮れていました。場所(お店)によっては、うどん屋で蕎麦を出し、蕎麦屋でうどんと提供するというようなスパイ行為も当然という状況にいたり、戦況は一進一退になってきていました。

そんなときです、うどんはこの難局乗り切るために、あらゆる食材と食事提供上の条約に提携したのです。これが世にいう「具材同盟」です。この具材同盟は麺界に衝撃を走らせました。あっても、「つるつる」「もちもち」などのすする系だけの楽しみに「サクサク」「じゅわっと」が加わったわけです。

これを契機にうどんは、その白い素肌に派手な具材をまとって、数々の戦いに勝利、勢力を拡大していきました。
価格で勝負の素うどん、特攻隊長のきつねうどん、出汁と卵の合体技の月見うどん、マッチョな迫力の肉うどん、どすこい力うどん、海外コラボのカレーうどん、そして伝家の宝刀天ぷらうどん。そして、ついに最終形態のラスボスとも言える「鍋焼きうどん」まで実戦投入する事となったわけです。最近ではカルボナーラうどんなんてものまでありますね。(注1,2)

これに対して、蕎麦は同じ方法を取ることを諦めて、その麺と汁(つゆ)の素材に、製法に、こだわり抜くことで戦うこと選びました。そんな蕎麦にとっては厳しい状況にもかかわらず、具材の中にもうどんのやり方が気に入らない天ぷらの一派がレジスタンスとして蕎麦派に加わることになりました。

レジスタンスになったの天ぷらに理由を聞いて見ると「温かい出汁につけられて、これでは我々天ぷらのサクサク感が損なわれてしまう。蕎麦であれば、基本的に別皿に盛られているので、我々の魅力も活かしきれる」というのが理由だったようです。

結果的に具材なし時代では「素」という言葉を使う理由もなく、そして具材を極限まで切り詰めて天ぷらだけにした天ぷら至上主義時代を歴てきた蕎麦は「蕎麦」と「天ぷら蕎麦」という2つの名称だけで成り立つことが可能になったので「素蕎麦」という表現にはならなかった!というのが真相ではないでしょうか。

この長く続いたの戦いも「ラーメンの来襲(拉寇)」によって、うどんと蕎麦が日本陣営として連合を結び、共に戦うとことになって幕を下ろすことになりました。その結果、いまでは蕎麦も具材を利用できるようになって現在に至っています。麺業界にはパスタ王朝からスパゲッティやマカロニ、アジアの米麺帝国からは刀削麺やフォーなども押し寄せて、この麺界はいつの時代にあっても、みんなの人気者、群雄割拠の時代が続いています。

 

仮説はこれぐらいにして。。。朝食などを食べようと思って立ち食いうどんへ。

素うどんの食券を買って、そっとおばちゃんにわたすと、うどんと一緒に「ハイ、素うどんね!」と大きな声で渡してくれるのがちょっと恥ずかしい。

「君らにはまだまだ天ぷらは早い、そのカスなら無料であげよう」というテーブルの無料天かすを山盛り入れる時もちょっと恥ずかしい。

年齢が重ねても「素」は大切かな。

注1)
鍋焼きうどんは、天ぷら、エビ、しいたけ、油揚げ、かまぼこ、ほうれん草、卵などなど豊富な具材を武器を装備していましたので、大きな期待を集めていましたが、いかんせん作るのに時間がかかる、熱くて食べるのに時間がかかるという問題を抱えて、局地的な利用にとどまりました。

注2)
大阪にはうどんすきというお鍋がありますが、これはお昼ご飯にはちょっと。。。やりすぎじゃないかと言うことで、「鍋拡散条約」が結ばれ、対象から外れています。

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